浮世絵江戸の暮らし|江戸っ子を熱狂させた勧進相撲【一曜斎国輝(2代歌川国輝)『勧進大相撲繁栄之図』】

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日本史
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浮世絵DATA

【タイトル】『勧進大相撲繁栄之図』

【作者】一曜斎国輝(2代歌川国輝・1830~74年)

【制作年】19世紀後半

浮世絵解説

 日本の国技である相撲は、もともと神事としてはじまった。その歴史は古く、垂仁天皇7年(前23)7月7日、当麻蹴速と野見宿禰という人物が力競べをしたことにさかのぼると伝わる。

 弥生時代には農耕儀礼として発展し、五穀豊穣を占うために相撲が執り行なわれた。

 奈良時代には天皇家の年中行事のひとつとなり、平安時代に相撲節会という国家行事となる。

 そんな相撲が興行として行なわれるようになったのは、江戸時代のこと。寺社の建立や修繕費を集めるという名目で催されるようになったのである。これを「勧進相撲」という。血気盛んな江戸っ子たちは、力士が激しくぶつかり合う相撲に大興奮。庶民に欠かせない娯楽へと昇華した。

『勧進大相撲繁栄之図』を眺めると、土俵周りの升席のみならず、よしずのかかった桟敷席まで人で埋め尽くされていることがわかる。ただし、当時相撲を見ることができたのは男性のみだったので、浮世絵に女性の姿が描かれることはない。

 また、当初は土俵がなかったが、元禄年間(1688~1704年)頃につくられるようになった。浮世絵上、土俵の四隅に座っているのは審判である。現代とは異なり、江戸時代は土俵上に審判が座って取り組みを見守っていた。

 土俵上、軍配を持っている人物は行事。よく見ると、脇差を差していることがわかる。勝負の判定をまちがえることはけっしてしてはならないことであり、もし誤ってしまった場合は責任を取って切腹するという気概を示しているのだという。

 土俵下には、力士たちが陣取っている。当時、多くの力士は大名に召し抱えられており、相撲はいわば藩同士のメンツをかけた戦いでもあった。なお、現代の力士の最高位である横綱は、江戸時代、大関のなかでもとくに強い力士に与えられる儀式上の資格に過ぎなかった。それが番付上の最高位とされたのは、明治時代に入ってからのことである。

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