江戸古地図|明暦の大火を機に拡大した江戸の町

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古地図

明暦3年(1657)正月18日から20日にかけて江戸の町を襲った「明暦の大火」により、江戸の町のじつに6割以上が焼失しました。この記事では、明暦の大火を境として江戸の町がどう変わったのかを古地図を通じて読み解きます。

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江戸の町を拡大させるきっかけとなった明暦の大火

『江戸火事図巻』に描かれた明暦の大火の様子

江戸幕府3代将軍・徳川家光の時代の寛永期(1624~44年)に江戸の城下町は一応の完成を見ましたが、明暦3年(1657)正月18日から20日にかけて起こった「明暦の大火」によって一変します。

火元は、江戸城北方の本妙寺。折からの強い北西風に煽られた炎は瞬く間に周辺の町屋敷に燃え移り、湯島、浅草、日本橋、佃島など広範囲のエリアが焼失しました。さらに正月19日昼前、新鷹匠町(現・文京区小石川3丁目)の武家屋敷から出火し、江戸城とその周辺の大名屋敷が焼失。同日夕刻にも麹町5丁目の町屋敷から出火し、火災範囲は芝など江戸南部へ拡幅。江戸市中のじつに6割以上が焼き尽くされるという大惨事となってしまいました。

最終的に鎮火したのは、20日午前8時頃のことでした。

この空前の大火災により、幕府は江戸の再構築を余儀なくされます。

まず幕府は防火対策の一環として火除地を創出するべく、それまで郭内にあった御三家の上屋敷や大名屋敷、武家地を郭外へと移しました。移転させられた大名家は1,000を超えたといいます。諸大名には上屋敷・中屋敷のほか、災害時の避難所として江戸郊外に下屋敷が与えられました。

また、三宅坂上にあった日枝山王社を現在地(千代田区永田町2丁目)に、日本橋横山町にあった西本願寺を現在地(中央区築地3丁目)に、神田駿河台にあった吉祥寺を現在地(文京区本駒込3丁目)に移すなど、それまで外郭内にあった寺院も外堀の外や新開地へと強制的に移転させたのでした。

隅田川以東や江戸郊外が開発されて町の数が増加

明暦3年(1657)正月に発行された『新添江戸之図』
延宝3年(1675)年に発行された『延宝江戸全図』。隅田川以東にまで町域が拡大している様子がうかがえる

次に武家地・町人地を拡充すべく、万治2年(1659)、隅田川に大橋(両国橋)を架橋し、本所・深川の開発を進めていきます。隅田川以東にまで町域を拡大することで、移転に伴う武家地・町人地を確保するとともに、江戸市中の密度を下げて延焼を防ごうとしたわけです。

このとき、竪川や北十間川、横川、横十間川といった掘割が開削され、その残土で盛土をおこなって市街地が造成されました。寛文期(1661~73年)には武家地や町人地として下賜され、新たに江戸の領域に組み込まれていきます。

また、防火用の空き地を確保するため、江戸の町人を強制的に立ち退かせて武蔵野に移住させました。このとき、吉祥寺門前町の住人が「吉祥寺村(現・東京都武蔵野市)」、神田連雀町の住人が「連雀新田(現・東京都三鷹市)」を開くなど、明暦の大火は武蔵野一帯の新田開発を進展させる契機にもなったのです。

一方、江戸近郊の駒込村などの農村地帯も武家地や町人地、寺社地として取り込まれることとなり、明暦の大火以前の時点で374あった町の数は、享保4年(1719)の時点で933にまで拡大しました。いわゆる「大江戸八百八町」の誕生です。

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