
これは、江戸時代に制作された『無筆名所案内図』である。地名や人名、ものの名前を音が共通する絵に置き換え、それがいったい何を示すのかを当てる江戸時代のなぞなぞだ。一般に「判じ絵」と呼ばれる。
タイトルにつけられた「無筆」は「読み書きのできない人」のことを表わす言葉。文字が読めない人に向けた江戸の地図でもあったのかもしれない。
さっそくこの案内図に描かれた地名を読み解いていこう。まずはこれ。どこの地を指し示しているかわかるだろうか?

絵を見ると、武士が矢を火で炒っている様子がうかがえる。
矢を炒る……やをいる……いるや……
そう、正解は「入谷」である。「炒る」という言葉が出てくるかどうかがカギだ。
次の問題はこちら。さてここはいったいどこだろう?

これもまた難解であるが、まずは人物をよく見てみよう。右の人物は「本」で、左の鳥は「ウ」であるようだ。
そして二人が興じている遊びはというと、どうやら「囲碁」である。
「本」が「ウ」と「碁」に興じている……ホン…ウ…ゴ……
そう、正解は本郷だ。ただし、左側の鳥が「ウ」であることに中々気がつかないかもしれない。
それでは次の問題はどうだろうか。

門をゾウがくぐろうとしている様子が描かれている。よく見ると、体の半分だけが門から出ている。
ゾウの体の半分が門から出ている……ゾウ…ハン……モン……
ということで、正解は半蔵門である。
このように、『無筆名所案内図』には簡単に解けるものからちょっと頭を悩ませないと解けないものまで、じつに多くの問題が掲載されている。
さて、あなたはすべての地名を読み解けるだろうか。江戸時代のなぞなぞでぜひ脳みそを鍛えてほしい。