映画『大名倒産』(浅田次郎原作)の登場人物・あらすじをご紹介|ネタバレ注意

スポンサーリンク
新刊紹介

2023年に映画化が決定された浅田次郎原作『大名倒産』(文藝春秋)。今回は、『大名倒産』の登場人物やあらすじを詳しく解説します。

スポンサーリンク

大名倒産登場人物

大名倒産を食い止める派

13代松平和泉守信房(間垣小四郎)

先代である松平和泉守が柏木村の娘に手を付けた揚げ句に誕生した4男。当初は家督を継ぐ立場にはなかったが、大名倒産のスケープゴート役として目を付けられ、13代松平和泉守を襲封。父が企てた大名倒産を食い止めるべく、奔走する。

磯貝平八郎

小四郎の幼なじみ。剣術に長ける。小四郎の襲封にともない、御用人として小四郎を支える。

矢部貞吉

小四郎の幼なじみ。算術に長ける。小四郎の襲封にともない、大納戸役として小四郎を支える。

比留間伝蔵

もと豊後杵築藩で勘定方をつとめる。財政の立て直しに奔走するも、金勘定にほとほと嫌気がさし、妻子を置いて出奔。江戸で水売りとして日々の生活を送っていたところ、丹生山松平家の窮状を耳にして助力を申し出る。

小池越中守

大番頭。娘のお初が小四郎の兄・新次郎に嫁いだことを契機に、丹生山松平家の親類となる。小四郎の生真面目さに心打たれ、小四郎を支えることに。

大名倒産推進派

御隠居様(12代松平和泉守)

丹生山松平家12代当主。江戸開府以来、12代にわたって積み上げてきた25万両もの借金を一気に解消すべく、大名倒産を企てる。

天野大膳

付家老。御隠居様に従い、大名倒産を推進する。

橋爪左平次

勘定方。当初は御隠居様に従って大名倒産を推進するも、小四郎に従って故郷の丹生山に戻った折に心を改める(?)。

加島八兵衛

丹生山松平家下屋敷用人。御隠居様に忠実に仕える。

そのほかの主要人物

間垣作兵衛

小四郎の養父。小四郎の襲封にともない、丹生山へ帰還。蘆川の川役人として、鮭の孵化養殖事業に邁進する。

板倉周防守

寺社奉行兼月番老中。丹生山松平家の窮状を把握するとともに、大名倒産をもくろんでいるのではないかとにらむ。幕政を揺るがさないよう、小四郎の財政再建を陰ながら支援。

貧乏神

もはや浅田作品おなじみの存在。丹生山松平家の財政を転覆させるべく、小四郎に従って丹生山へ赴くも、そこでケガを負ってしまう。丹生山城下にある浄観院の薬師堂で薬師如来にケガを治してもらった代わりに改心を余儀なくされ、丹生山城下に福の神を呼び込もうとする。

大名倒産あらすじ

丹生山松平家は越後の丹生山を本拠とする3万石の譜代大名。江戸開府以来、12代にわたって家名を継いできたが、積もり積もった借金はなんと25万両(約300億円。1両=12万円として計算)。しかも歳入の1万両に対して年間の利息は約3万両というもはやどうしようもない財政状況に陥っていた。そこで12代松平和泉守はお家取り潰し計画を画策。隠し財産をひっそりと貯め込み、当代(小四郎)に腹を切らせて自分たちはゆっくりとした余生を過ごそうと考えた。

そうした折、小四郎は幕府への献上品の不渡をきっかけとしてお家の財政が火の車であることを知る。また、いろいろと調べるうちに、父が大名倒産を企てていることも発覚した。小四郎は大名倒産を防ぐべく、丹生山の美しい領地を守るべく、経営再建に乗り出す。

大名倒産感想|ネタバレ注意

『大名倒産』は2019年12月に単行本が発売され、2022年9月に文庫化されました。2023年には映画化されることも発表され、いま注目を集めている時代小説のひとつでもあります。

本作のキーワードはタイトルにもあるとおり「大名倒産」です。当時から倒産という言葉があったかどうかは定かではありません。破産を意味する「分散」という言葉は使われていたようですが。

物語のはじまりは、文久2年(1862)。尊皇攘夷運動が高まるなか、幕府は皇女和宮を14代将軍・徳川家茂の正妻として迎える公武合体策を打ち出し、幕政の維持に乗り出していた時代です。

そのような状況のなか、丹生山松平家の家督を継いだ13代松平和泉守信房こと小四郎は御家の再建を図るべく、金策に奮闘します。

正直なところ、上巻までは比較的楽しく読めました。御家の財政が窮迫する中、小四郎は参勤交代の費用を捻出しようとしますが、どうにも首が回りません。そこで8代将軍・徳川吉宗が打ち出した先例に従い、供連れを最小限にとどめ、わずか40両あまりの予算で道中を乗り切ろうと画策します。本来であれば9泊10日の道中をわずか5泊7日で駆け抜けようとするシーンは、『超高速!参勤交代』を彷彿とさせますね。

ただ残念なことに、丹生山松平家の財政を傾けた張本人が貧乏神であることが発覚してしまうわけです。浅田さんの小説ではよく登場するので、またこのパターンかと思いました。

小四郎が藩の財政再建に苦心するシーンも描かれることは描かれるのですが、そこまで詳しくはありません。財政を立て直すための策として描かれているのは、小四郎の養父である間垣作兵衛が育てた鮭を江戸へ回航して売り出すことくらいです。

この点はちょっとがっかり感が否めません。上巻で「どのように財政再建をするのか」とワクワクしながら下巻を読んだら肩透かしを食らうことこの上なしです。結局御家の財政再建に貢献するのは、改心した貧乏神が呼び寄せた七福神ですからね。この辺の内容の薄さは、時代小説としては物足りない部分だと感じました。

あくまでも神々が織り成す大名倒産コメディーといった感じなので、面白い時代小説を読みたいという気持ちで本作を手に取るのはおすすめできません。

浅田作品に出てくる貧乏神や、ちょっとした親父ギャグの応酬が好きな方は楽しめる一冊かと思います。

タイトルとURLをコピーしました