浮世絵江戸の暮らし|江戸庶民は上水道を使っていた!【歌川豊国『絵本時世粧』】

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浮世絵DATA

【タイトル】絵本時世粧えほんいまようすがた

【作者】歌川豊国

【制作年】享和2年(1802)

浮世絵解説

 江戸時代の庶民が住んだのは、裏長屋と呼ばれる借家の集合住宅。路地の中央には共同の井戸があり、住人は井戸の水を汲み上げて炊事などに用いた。浮世絵には、井戸から汲み上げた水を家の中へ運ぶ女性や洗濯をする女性などが描かれている。

 井戸の水は、地下水ではなく上水であったところに大きな特徴がある。

  そもそも、海に面した低湿地と武蔵野台地に囲まれた江戸では、良質な水を手に入れることは極めて困難だった。そこで徳川家康は江戸に城下町を築くにあたり、家臣・大久保藤五郎忠行に上水の開削を命じ、小石川の湧き水を水源とする小石川上水を整備させ、神田まで通水させた。

 また飲料水を確保するべく、千鳥ヶ淵川の水を堰き止めて千鳥ヶ淵を、武蔵野台地の湧き水を貯めて牛ヶ淵を整備した。

 だが江戸の発展に伴って人口が増加するにつれ、飲料水が不足した。そこで井の頭池、善福寺池、妙正寺池を取水口とする神田上水を手はじめとし、多摩川の水を引いた玉川上水、玉川上水を水源とする青山上水・三田上水・千川上水、元荒川を水源とする本所上水が次々と引かれていったのである。なお、青山・三田・千川・本所上水は経費削減のため享保7年(1722)に廃止されている。

 これらの水は地中に埋めた石樋や木樋などを通じて江戸市中へ供給され、長屋の井戸の地中に埋められた巨大な桶にも配水された。

 長屋の住民はこうして引かれた上水を共同で利用していたのである。江戸っ子はこれを大変誇りに感じ、「水道の水で産湯をつかう」ことを自慢したという。

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