きらびやかな輝きを放つ金箔
延暦13年(794)の平安遷都以降、京都は日本の首都として1000年以上もの歴史を刻んできました。町中を歩けば、古都の華やかな雰囲気をいまに伝えてくれる歴史ある建物を多く見ることができます。
平成6年(1994)、計17の寺社、城が世界文化遺産に登録されました。そのなかでも、ひときわ多くの観光客を集める場所といえば、京都市北区に鎮座する金閣でしょう。
金閣は、正式には鹿苑寺舎利殿といいます。臨済宗相国寺派に属す寺院で、相国寺の塔頭寺院のひとつです。
応永4年(1397)、室町幕府3代将軍足利義満が北山殿の一角に建造した金閣は、寝殿造の法水院、書院造の潮音洞、禅宗様の究竟頂の3層からなります。平安時代に流行した浄土信仰と、鎌倉時代に興隆した禅宗信仰が結合されて生み出されました。
金閣といえば、見どころはやはり外壁を覆っている金箔の輝きではないでしょうか。造営当初から金箔が張られていたと伝わりますが、「金閣」と呼ばれるようになったのは15世紀以降のことであるといわれます。
時代の流れの中で姿を変えていった金閣
金閣の周囲に広がる鏡湖池は、その美しさをより際立たせてくれます。水面に映る金閣の姿は「逆さ金閣」と呼ばれ、多くの観光客の目を楽しませてくれます。
現在の鏡湖池の面積は約100メートル四方ほど。建物の南面に広がっています。ところが『都名所図会』の解説によると、じつはかつて金閣の周囲はすべて池だったといいます。そして金閣の北に「芳徳(天鏡閣か)」という名の御所があり、2つの建物の2階部分が橋で結ばれ、その姿は「長虹が空に横たわるがごとし」だったと伝わります。
鏡湖池には、仏教の中心である須弥山を象徴した九山八海が配されました。また、建立にあたっては諸国の大名が運んできた名石が置かれています。『都名所図会』にも描かれている「赤松石」「畠山石」がそれです。二人とも、義満の治世を支えた臣下です。
しかし義満の死後、その跡を継いだ4代将軍義持は金閣以外の伽藍をほぼ壊して境内地を縮小し、北山殿を禅宗寺院に改めて「鹿苑寺」と改称しました。
さらに応仁元年(1467)から文明9年(1477)にわたって勃発した応仁の乱の際に金閣は西軍の陣所とされ、多くの建造物が焼失。荒廃を余儀なくされたのでした。
ようやく再建がなされたのは、江戸時代に入ってからのことです。主要な伽藍が再興されるとともに、慶安2年(1649)には金閣も再建されました。このとき、池の一部も埋め立てられて、金閣は地続きとなりました。『都名所図会』には、現在とほぼ変わらぬ姿の金閣が描かれています。
その後、明治初年の上知令により、東西約1744メートル、南北約1635メートルもあった境内は東西約1090メートル、南北約981メートルにまで縮小。こうして現在の寺域が形成されました。
なお、金閣は昭和25年(1950)、学僧の放火によって全焼しましたが、昭和30年(1955)に再建され、昭和62年(1987)には金箔が張り替えられて再び往時の輝きを取り戻しました。このときに使用された金箔の量は約20キログラム。かつての5倍以上の量であったといいます。
京都の歴史をもっと知りたい方におすすめの書籍一覧
『重ね地図でたどる京都1000年の歴史散歩』谷川彰英監修(宝島社)
半透明の特殊トレーシングペーパーを使用した重ね地図でたどる、大判の京都・歴史散歩書籍。トレペ仕様の現代地図と、通常用紙の古地図を透かして見比べると、京都1000年の歴史が浮き彫りに。「平安京・貴族邸コース」「平氏の栄華コース」「秀吉の御土居コース」「幕末の志士コース」など、23の歴史散歩コースを設定。さまざまな時代や切り口で、奥深い京都1000年の魅力をとことん味わうことができるビジュアル街歩きガイド。
『地図で読み解く初耳秘話 京都のトリセツ』昭文社旅行ガイドブック編集部編(昭文社)
地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。京都の知っているようで知られていない意外な素顔に迫る。
『地図で楽しむ! 京都の歴史さんぽ』梅林秀行監修(JTBパブリッシング)
読むだけでも楽しい史跡コメント入り地図帳が別冊付録。「歴史」と「地図」から、京都を楽しむためのテーマが満載。
『京都の歴史を歩く』小林丈広、高木博志ほか著(岩波新書)
観光名所の賑わいの陰でひっそりと姿を消す町屋の風景。雅な宮廷文化、豪奢な桃山文化に彩られた「古都」のイメージが流布するなか、つのるのは違和感ばかり。これが、京都なのだろうか……。15のコースをめぐり、本当の京都に出合う小さな旅へ。かつて都に生きた人びとの暮らしと営みに思いをはせる。
『地球の歩き方 京都 2023~2024』地球の歩き方編集室編(学研プラス)
1200年の歴史を誇る町「京都」全26市町村の見どころや美食、逸品、伝統文化などを地球の歩き方ならではの切り口で 徹底紹介。